月見に酒よ戯れよ
逃亡せよ、しからば御免
しだれ桜と転寝のうつゝに
刃を交えて花一匁
あやかしの深き闇ぞうるわし
怠惰に煙くゆらせ戯るる
ぬらりくらりと袖を引いて
三千世界の雪上に舞えど
凛とせし冬景色に消ゆ
波にさすらい風のまま流浪に


弔いの戦は誰が為に
夜桜の散りゐく頃に
その太刀は慈悲の欠片さゑなく
飲めや歌えや酔いの瀬に
焼けど、妬けど、火傷しますぞ
仇し骸に想いを馳せ
悔悛の時こそ愛しさを
誰ぞ待ち人を想わざる
篠突く雨に濡れて
桜は咲くのさ、この世の限り


漆黒の華ぞあやしくかなし
彼岸花を餞にさまよえど
病みし純白
しじまの夜も明けぬれば
滅べど嘆けど待ち侘びて
賽の河原で恋し恋しと頭蓋を積みて
華やぐ闇に溺るる
浮世は憂き夜となりけるに
やすらかなる闇に眠りたもう
地獄事変


( ぬらりひょんの孫 )